異様な高揚感が続いている
ひょんな事からツバメくんとデートまがいの密会ができてしまった!
二人でご飯を食べに行くという。そこでとても自然な流れ(相手の話の中で)彼の気持ちを聞き相談を受ける。
結婚できないんじゃないかと不安、家を継ぎたくない、趣味を追求したい、女が煩わしい、一人暮らしがしたい…
わかったようなことを答えながら、二人の時間を過ごす、仕事に充実感を覚え、安定した精神状態で、20代後半を謳歌する好青年が私と二人で、週末の夜を共有している。
少し酔っ払って、珍しく語尾がタメ口になる。繊細で、いつもガチガチの心の鎧をつけている彼に、少しのほころびが見える。
明日は日曜日、終電間近の場末の中華料理。
思わずトイレでつぶやく私。
これ、完全に持って帰れるじゃん…!
だが、勇気も根性もない私は、じゃあお会計しようと店員を呼び、彼の終電を気にしてそそくさと閉店間近の店を後にする。
家に帰って寝る前妄想する。あの状況で、どうやったら持ち帰れたのか?
カラオケ行かない?シャワー浴びたくない?と、ホテル街に踵を返す…ってどこのエロオヤジだよ。
やっぱりお酒をガンガン煽ってデロンデロンに酔わせて…いやいや、それ犯罪でしょ。
まともなソリューションが全く思いつかない。
まぁ、イマジネーションが働かない時点で彼の鎧は完全にはだけていたわけではない、たぶん、首筋が見えていただけで、私はそれで舞い上がっていたのだが…。
だが、このまま調子よく距離を詰めればいつかやれる日は来るかもしれない。いや、だが本当にそんな日が来てしまったら…。
なんて取らぬ狸の皮残余をしてしまうくらい高揚感が高まっている私だった。
ツバメくんに夫のことをいつもの調子で惚気ておいて、彼を手に入れらると思っている時点でお花畑だな。
そして、ツバメくんのことをかっこいいと思い、彼の繊細で誠実な人柄に触れて舞い上がりながら、やっぱり夫のことが誇らしくて自分にとって替えの聞かない存在なんだと改めて噛みしめたりして。
私はそして分かっている。私が彼に惹かれるように彼も私といて居心地が良いはずなのだ。だって私たちはとても傷つきやすく繊細な似た心を持っているから。だから、彼と私はたぶん付き合ったらお互いを傷つけあってしまうし、共依存のようなよくない関係になってしまうとも思う。
私には夫のように太陽にように明るく、強い人じゃないと、潰れてしまう。笑顔で、私の苦しみなんてリセットできてしまう、力強い人が私にはやっぱり必要で、きっとツバメくんも太陽のように明るい女性と付き合って欲しいと思う。
また会おうという約束をして、夫も紹介する約束もして、彼に密かに性的興奮を覚えながら、そんな自分に嘘をつくように家族ぐるみの付き合いを進めて行く私。
ツバメくんが好きで、ツバメくんを抱きたいけれども、彼には彼の幸せを手にしてほしい。彼の人生の幸福を願う。矛盾のなのに、矛盾じゃない。